« 「PC1台目はノートブック」だろ? | トップページ | 焼香スタイル »

2009/02/08

【疾走】たまのBadTripは嫌いではない。

Photo

『疾走』(重松清)を読了。

清々しい読後感...。んなわけね~~~~~~~~~~!

久しぶりに下腹部が鈍く、重くなる本を読まされた。

早くページを繰りたいという気持ちと、もうイヤだ、このまま本を置いてしまいたい、という気持ちが常にせめぎ合い、苦しみながら読み進む羽目になる。

周囲の空気が鉛に変わる。体温が少し下がる、息が浅くなり、沈む。浮上したい。でも、海面がどっちなのかワカラナイ。

この感覚はどこかで経験している。読み終わって暫くして、ようやく気付いた。

『氷点』を読んでいた時の感覚に近いのだ。

重松清は山口の育ちだとのこと。「疾走」は、おそらく周防灘に面した集落が舞台となっている。一方、「氷点」は旭川の近郊が舞台だ。

 陽子とシュウジ

 北国と瀬戸内

 昭和と平成

 女性作家と男性作家

 開拓の町と、歴史が根付く町

 家族の中の物語と、地域の中の物語

違いはあれど、救われない人間を描く作品だ。いや、救われる姿を描いているのか...。

「氷点」が凍てつく乾いた空気の中での、寒々した人間模様を描いているのに対し、 「疾走」は、ねっとりとした海風と、生臭い体液に沈む少年を描く。

デュルケムの自殺論の中で、利己的自殺とは「救いのない絶望」によるものと定義されていたはずである。主人公の暮す町は、バブル経済とその崩壊により、ゲマインシャフトとゲゼルシャフトが同時に消失する。その時、少年の人格は依るべき社会規範と家族規範を同時に失い、その喪失感が少年を孤独へ、そして絶望へ追いやるのだ。

以前のエントリでちょっと書いたが、人間なんて自分の置かれている状況がどんなに不幸だと思っても、それは比較対象物との程度の差でしか認識しえないんだと思う。

この本は自分がこの世で一番不幸だと思っている奴に読んで欲しい。そして、これ以上の絶望の物語を紡ぎ出せるかを聞いてみたいものだ。

深い闇を覗くことは、人を強くすると思う。戻って来る事ができさえすれば。

俺はまた少し強くなれた気がする。


YUKIちゃんありがとう!がっつりテンション落としてくれて!

周囲の浮かれてウザイ奴を懲らしめたい時や、自分が世界一不幸だと勘違いしている奴に、この本をプレゼントすることにするよ!(笑)

しかし、Phil Haleを表装に使うセンスも素晴らしい。

文庫本で買ってしまったけれども、表紙の為に単行本にすればよかった...。ちょっと後悔。

|

« 「PC1台目はノートブック」だろ? | トップページ | 焼香スタイル »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

重松清は『その日のまえに』と『流星ワゴン』を読んだけど、
『疾走』は本屋で手にとったけど、装丁が怖すぎて買えなかったな。
あらすじとレビューは見たけど、
『疾走』、今はちょっと読む気分じゃないかな。
771○と違って私は一緒に落ちちゃいそう・・

投稿: abi | 2009/02/09 01:30

がっつりテンション落ちたか(笑)

ここまで極端なシチュエーションを提示されると、物語のあまりの救いの無さに怒り出したり、一緒に落ちて暫く戻れなかったり、途中で読めなくなって本を閉じたり・・・・・そんな反応の人も多いかもしれないけど、

あたしはこれ読むと、落ちる自分がいるのと同時に、冷静に自分を省みる自分が自分を正すっていうか、どんどん清らかでポジティブなエネルギーに満ちてくるんだよね。その時自分の中で何が起こっているかはよく分かっている。

しかしShoくん多趣味だね。ヘイル知ってるんだ!
スティーブンキングなんかも彼を起用してたりするよね。彼の絵大好き!リアルなようで極端にディフォルメされてる部分もあり、同時に人を食ったような笑えるシチュエーションだったり・・・・作品集持ってたんだけど、どこかに逝ってしまったよ。

重松は上のabiさんも描いている「流星ワゴン」もいいよ。

これはそんなに落ちない(笑)

投稿: YUKI | 2009/02/09 02:48

>abi
うん。読むタイミングをはかる必要がある本かな...。
洗練はされていないけれども、スローペースでも馬車のように力強い筆運びは結構好きそう。他の作品も読んでみるよ。

>YUKI
ちょっと、今日になってもう少し消化されたかなぁ~。重松が意識しているのは、主人公を救おうとしているのではなく、読み手を救おうとしているんだよね。
だから、わざわざ「おまえ」という言葉を使っているんじゃないかな。そして、シュウジはキリストと重ね合わされゴルゴダに斃れる。
読み手自身の為にね。
シュウジが斃れることによってはじめて、読み手が救われるんだ。この辺はキリスト教を意識した構造になっていると思う。
自殺に寄らず、人の手にかかって斃れることになるというところで、生きる意味を問い直させられるよ。

ヘイルは友達の家に画集があったんだ。
なんかジオイドの便所を思い出す色遣いなんだよね...。(苦笑
折角だから画集も買ってみっかなぁ~

投稿: 771○ | 2009/02/09 11:14

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/48185/43963679

この記事へのトラックバック一覧です: 【疾走】たまのBadTripは嫌いではない。:

« 「PC1台目はノートブック」だろ? | トップページ | 焼香スタイル »